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 ブルックリンに引越ししてから、早いものでもうすぐ2年を数えます。ニューヨークに来てから32年も住んでいたマンハッタン島を離れるのは心残りでしたが、ブルックリン生まれのピートが故郷に帰りたいと言い出して聞かなくなりました。もう80歳を超えたし、大病して命拾いした後だったので、さすがのわたしも首を横に触れなくなりました。
 といって、ブルックリンはこのところすっかり人気が出たので、アパート探しがたいへん。本やら資料やら大荷物を抱えるわたしたち2人には結構大きなアパートが必要です。プロスペクト公園入口の「グランド・アーミー・プラザ」近くにやっと手頃の賃貸が見つかったと思ったら、1年更新後、2年目には大家さん夫婦がロンドンから帰ってくるというではありませんか。そこで急遽、同じ「プロスペクト・ハイツ」という地域に建てられた古いタウンハウスのなかのアパートを見つけました。そこへ移って5ヶ月になります。
 その間、新潮社のウエブマガジン「フォーサイト」に『ニューヨーク発 トランプのアメリカ』を連載してきました。介護の必要になったピートの世話で追われる毎日のなか、ニュースを追っかけ、膨大な記事や情報を読み、テーマを探して、それで1本書くというのは、結構時間のかかるものです。とはいえ、ドナルド・トランプ率いる米国がどこへ向かおうとしているのか、追従する日本はどこに引きずられるのか、音をたてて大きく変動するこの激動のアメリカを毎月報告できるのは、ジャーナリストとしてこれほどやりがいのある仕事はありません。
 とくにモラー特別検察官がどこまでトランプとロシアの癒着を追求できるか、司法の力がどこまで大統領(行政)を抑制できるか、その力関係をしっかり観察したいと思って、大統領選挙のあの晩から17回連載を続けてきましたが、大きな壁にぶつかりました。毎月というこのスタイルで現在の動きをニューヨークからフォローするには限界が出て来たのです。
 さらに限られた仕事時間内で本の執筆にまわす時間がとても足りません。そこで思い切って『トランプのアメリカ』をしばらく休んで、次の本の執筆に専念することにしました。
 これまで、連載を読んでくださった方々へ心よりお礼いたします。本当にありがとうございました。
 最近は帰国する機会も減ってきたので、ほとんど音信不通になってしまいがちの友人から激励のメールをいただき、毎月、嬉しく思っていました。これからは、自分のウエブサイトに毎月、こんな感じで何をしているか、エッセイのようなものを書いていきたいと思っています。再び、拝読いただけると幸いです。

 サイトの更新にあたっては、ウエブ上部の写真も新しくしました。これはQ号線という地下鉄からiPhoneで撮った写真です。Q号線は、以前の住処のあった「キャナル・ストリート」駅から乗ると、突然、地上に出て、イースト・リバーを渡るのです。対岸のブルックリンに入るとまた地下に潜ってしまうおかしな地下鉄なのですが、わたしはその常識を覆すような、臨機応変さというか、突飛さが好きで、この地下鉄に乗るのを楽しみにしています。それに我が家から「7AV」という駅までほんの5分。このあたりは緑の多い住宅地なので、本の執筆に本腰を入れるにはとても良い環境ですが、さてどうなることやら…。

(2018年5月23日)

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日本海新聞の<海潮音>が『GHQと戦った女』について、母の日に取り上げてくださいました。わたしの本を読んでくださり、書いてくださることは大きな励みになります。

 
青木冨貴子(あおきふきこ):ニューヨークを拠点に活動するジャーナリスト・作家。これまでに日本の主要新聞、雑誌で数多くの記事、コラムを発表、ノンフィクション作品やルポルタージュ、エッセイ集は14冊以上を数える。

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